Vol.32
16TH ART FESTIVAL OF PAPER 2024 AYAME KIKUCHI EXHIBITION
2024年10月1日(火)~12月8日(日)
紙をカッターで切り抜き、折り曲げ、それを無数に重ねて、自然界の循環や感情の流れ、生命エネルギー等を視覚化する造形作品を制作しています。
水が豊かな日本で育った私にとって、富士山は地球の循環を思い起こさせてくれる象徴でもあります。
日本の文化は水とともにあり、紙もまた水の産物であると考え、紙という素材は、様々な表情を見せてくれます。
年間約20億~30億トンもの雨が富士山麓に注がれながら、そのほとんどが川を作ることなく、富士山の溶岩が吸収し、地下でゆっくり時間をかけながら、湧き水となって流れるという、富士ならではの独特な水の形態が巨大な濾過システムのようでもあり、また、私にとっては一滴の雫の落ちる音でさえ、そこに蛙や水草が暮らしていることを思い起こさせてくれる大切な記憶との繋がりでもあります。
自然界の特質をも変えられる技術が発展した現在に生きる私は、紙で言うならば、皺がよる、燃えやすい等の自然物の特性を賜物と捉えることを忘れてしまいがちであり、文化の向上と同時に起こる、自然や一個人のライフスタイルに至るまでの存在そのものの特質を探求することの衰退を時に考えさせられてきました。
雨として降り注ぎ、何年もの時を超えた水の旅に人が恩恵を受ける不思議な自然との関わりを、この地を文化の母体と捉えた時、私は幼い時に立ち返り、紙を千切るという単純な行為や、制作途中で出た意図としない奇怪な形の紙屑も素材として取り入れ、過去作品から発展させたいと思います。
立ち返ることは、戻る行為なのか、はたまた発展なのか、手を動かしながら浮かび上がる流れの形に耳を傾け表現することで、問いかけとなる空間を制作したいです。
菊地絢女
菊地 絢女 Ayame Kikuchi
神奈川県生まれ・在住 東京工芸大学芸術学部卒業
グラフィックデザイナーの傍らアート活動を経て、2008年美術家として独立。
紙、布、廃材などを使用した立体造形やインスタレーションを制作する。
自然界の循環、生命エネルギー、人の感情の流れに焦点を当て、それらを視覚化する。
布と絵画を構成した造形や、彫刻としての切り絵表現、廃材の造形等、幅広い作品を展開。
主な展覧会・個展
アーティストトーク 10月6日(日)13:30〜14:30 参加無料・申込不要
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