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Vol.22

カタチの進化論 柳井嗣雄展

TSUGUO YANAI EXHIBITION

2022年7月6日(水)〜9月25日(日)

はじめに手があった。手は人間と共にあった。おそらく人類が初めて創り出した立体造形物は、自由になった手で握りしめた粘土の塊であったのではないだろうか。

アトリエでその日の作業が終わり、余った紙原料を保管するために手の中で握りつぶして脱水することがある。この繊維の塊(立体造形物)はとても興味深いカタチをしている。 私たち人間の手の形は、指紋が一人ひとり違うように唯一無二のものであり、握りつぶした塊も千差万別なのだ。手の中で握りしめた無意識のカタチこそ実は最初に信頼できる他者であり、皮膚を通して世界を感じ取る手がかりとなる。

20年前より何度も繰り返し実践してきた「手の中プロジェクト」というワークショップがある。これは子供から老人まで様々な人々に紙の原料を握ってもらうというシンプルなワークショップなのだが、握るものと握られるモノが逆転し、手の中の見えない空洞が一 瞬にしてリアリティーを持った姿で現れる。直接的に内と外が身体接触する瞬間に立ち会うことになる。それらの塊をテーブルの上に並べてみると、同じカタチが一つもないにもかかわらず、握るという行為の原点、ヒトが共通してもつ創造力の源泉のようなものが見えてくるような気がする。

今回はその「手の中プロジェクト」と同時に、道具を使わず自分の手だけで作った紙のカタチを展示したいと思っている。世の中のIT化の流れに逆行するようだが、究極のアナログ作業が目的である。作らないように作る、あるいは作るように作らないというおよそ文明的でない手法の中から何か新しい発見があるかも知れない。言うまでもなく紙は植物の繊維でできている。今回はスギ皮繊維と楮の繊維を作品の素材としようと思う。地元、飯能市の製材所で廃棄されるスギ皮を頂戴し、煮込んで繊維を採取した。紙とは何か、造形とは何かを自身に問いかけるように素材を握りしめなければならない。 2022/4/28 柳井嗣雄


フライヤー

フライヤー表(PDF)
フライヤー裏(PDF)


プロフィール

柳井嗣雄 Tsuguo YANAI

1953年 山口県萩市生まれ。1977年 創形美術学校版画科卒業後、スタンリー・W・ヘイターに師事(アトリエ17、パリ)。1980年より銅版画家としてスタート。版画用紙を自ら漉き始めたのをきっかけに1985年より紙の作品制作、ペーパーワークを開始。物の在り様を、風化して消えてゆく物質的存在と、記憶やイメージとして現れる精神的存在とし、「物質と生命の記憶」をテーマにする。紙漉きの手法をベースにしたインスタレーション作品を特長とする。楮栽培から原料作り、様々なペーパーワーク技法の研究、開発、指導を行う。PAS和紙アートスタジオ主宰


主な個展
1989
ギャラリー21+葉(東京)→ 同1980,1987
1991
ギャラリーαm(東京)
1993
ギャルリ クキ(パリ)
1994
調布画廊(東京)→ 同1992
1999
ギャラリー ゴトウ(東京)→ 同2001,2013
2000
ギャラリースペース21(東京)
2002
山口県立萩美術館(山口)
2006
マキイマサルファインアーツ(東京)
2014
プラザギャラリー(東京)
2015
いりや画廊(東京)
2016
ストライプハウスギャラリー(東京)→ 同2014
2018
POLARIS the art stage(神奈川)
2019
宇フォーラム美術館(東京)
2020
鎌鼬美術館・田んぼ(秋田)
主なグループ展
1982
所沢野外美術展 所沢航空記念公園(埼玉)
日本国際美術展 東京都美術館、京都市美術館→ 同1986,1990[佳作賞]
1985
現代日本美術展 東京都美術館、京都市美術館→ 同1994
国展 東京都美術館、愛知県美術館、大阪市立美術館[野島賞]
1985-1990
現代美術今立紙展 今立町(福井)→ 同1987[佳作賞],1989[優秀賞],1990[大賞]
1988
紙と現代美術[谷新 企画] ニッコリ画廊(イタリア)
1990
第3回INO紙のことば展[谷新 企画] いの町紙の博物館(高知)
1991
「イメージの境界」  エスパースジャポン(フランス)
立体の紙・身体の紙[藤嶋俊會 企画] 神奈川県民ホール・ギャラリー(横浜)
1991-1997
白州・夏フェスティバル 田中泯の身体気象農場(山梨)
1993
現代日本の紙造形展 コート デ ネージ文化会館(カナダ)
第1回アジアパシフィック トリエンナーレ クイーンズランド美術館(オーストラリア)
1996
「NATURE-素材とイメージ」 エンハロット美術館(イスラエル)
1999
「和紙のかたち」 練馬区立美術館(東京)
2000
「芸術の胎動」 所沢市民文化センター(埼玉)
2002
「紙のワンダーランド」 群馬県立館林美術館(群馬)
2003
SOFA NEW YORK Seventh Regiment Armory(アメリカ)
2005
第5回 国際タペストリー アート トリエンナーレ トゥルネー文化館(ベルギー)
2009
「鎌倉巡空」 光則寺(神奈川)
2011
国際ペーパーアート会議 国立国父記念館(台湾)
2012
第11回まつしろ現代美術フェスティバル 松代藩文武学校(長野)
2014
Paper Objects Festival リガ(ラトビア)
2015
「反転と回帰」 カナダ大使館高円宮記念ギャラリー(東京)
2018
Contemporary Art from Japan Södertälje konsthall(スウェーデン)
2019
Dʼun bord à lʼautre‐Traverser la Surface Abbaye dʼAlspach(フランス)
2021
「私たちの光と陰」 Aidée Bernardと二人展 宇フォーラム美術館(東京)
表層の冒険-抽象のバロキスム[谷川渥 企画] ギャラリー鴻(東京)
上海国際ペーパーアート ビエンナーレ Fengxian Museum(中国)
2022
宝船展「くもをたがやす」 埼玉県立近代美術館(埼玉)

特別講座

アーティストトーク 7月10日(日)13:00〜14:00
*無料・申込不要(新型コロナウイルス感染症の影響に伴い変更する場合は、ウェブサイト・facebookにてご案内をいたします。ご確認のうえお越しください。)


開催情報

開催期間
2022年7月6日(水)~9月25日(日)
開館時間
10:00〜18:00
休館日
8月16日(火)~19日(金)、9月5日(月)*ロゼシアター休館日を休館
観覧料
無料
主催
富士市
主管
一般社団法人富士芸術村

*最新情報は、当ウェブサイト・facebookをご参照ください。